月を目印に南東へ向かって歩く。ふたりが目指す場所は、木の生い茂る岬に建てられた船舶の指標であるあの灯台、金星の塔。
その昔展望台として人気があったが、老朽化が進み立ち入り禁止になった塔だ。ただ今でもずっと灯台の役割は果たしており、名の通りいちばん明るい灯台として航海者たちの道標となっている。
日付を越えてからなおずっと歩き続けて、2時間が経っていた。休憩をはさみつつ歩いてはいるが、疲労感は着実に蓄積していた。
くじら公園からふたりが目指している目的地、金星の塔までは距離にしておよそ180キロあった。毎日10キロ以上歩かないと、梅雨が明けるまで、この逃避行の終わりまでに辿りつかない距離だった。
春は璃来に一度尋ねたことがあった。どうしてその場所なのか、と。
「憶えてる?13年前のこと」
「13年前?」
春は脈絡のない璃来の問いかけに疑問を示した。
璃来は、春が思ってもいなかった言葉を口にした。
「 " 神隠しからの生還者 " 」
13年前、新聞などのメディアで大々的に取り上げられた、ふたりの少女の失踪事件。
ある8月の真夏日、3才と2才の女児ふたりが行方不明になった。
3年に一度のペースで、金星の塔のある八江町では大きな祭りが開かれる。その祭りには、1才から6才未満の小さな子どもだけが参加する献供の儀という催しがある。
といっても、実際は子どもたちが祠に花を手向け願い事を言うだけであったが。
森を歩いた先にあるこの地の守り神が眠るとされている小さな祠に、子どもが生まれたことを報告し安息とこの地の繁栄を願うために始まった行事で、当時はその中から神へ捧げる供儀として純粋無垢である幼子、特に女児を人身御供_すなわち生贄とする風習があった。
この祭りはこの祠に続く森の入り口を中心として出店が数多く並ぶ配置になっている。
今では子どもの度胸試しになっており、泣かなかった子どもは将来成功するというひどく曖昧なものに変わっていた。
それでも、今でもなお続いている1つのイベントとなっている。
「聞いたことある。テレビでも話題になってたみたいだけど、昔のことだから忘れちゃったな。それより_」
どうしてそんな昔のことを。
すると、璃来は耳を疑うような発言をした。
「ぼくたちだよ、その生還者。金星の塔は、ぼくたちが一度死んだ場所」
「…え?…何言って……」
その昔展望台として人気があったが、老朽化が進み立ち入り禁止になった塔だ。ただ今でもずっと灯台の役割は果たしており、名の通りいちばん明るい灯台として航海者たちの道標となっている。
日付を越えてからなおずっと歩き続けて、2時間が経っていた。休憩をはさみつつ歩いてはいるが、疲労感は着実に蓄積していた。
くじら公園からふたりが目指している目的地、金星の塔までは距離にしておよそ180キロあった。毎日10キロ以上歩かないと、梅雨が明けるまで、この逃避行の終わりまでに辿りつかない距離だった。
春は璃来に一度尋ねたことがあった。どうしてその場所なのか、と。
「憶えてる?13年前のこと」
「13年前?」
春は脈絡のない璃来の問いかけに疑問を示した。
璃来は、春が思ってもいなかった言葉を口にした。
「 " 神隠しからの生還者 " 」
13年前、新聞などのメディアで大々的に取り上げられた、ふたりの少女の失踪事件。
ある8月の真夏日、3才と2才の女児ふたりが行方不明になった。
3年に一度のペースで、金星の塔のある八江町では大きな祭りが開かれる。その祭りには、1才から6才未満の小さな子どもだけが参加する献供の儀という催しがある。
といっても、実際は子どもたちが祠に花を手向け願い事を言うだけであったが。
森を歩いた先にあるこの地の守り神が眠るとされている小さな祠に、子どもが生まれたことを報告し安息とこの地の繁栄を願うために始まった行事で、当時はその中から神へ捧げる供儀として純粋無垢である幼子、特に女児を人身御供_すなわち生贄とする風習があった。
この祭りはこの祠に続く森の入り口を中心として出店が数多く並ぶ配置になっている。
今では子どもの度胸試しになっており、泣かなかった子どもは将来成功するというひどく曖昧なものに変わっていた。
それでも、今でもなお続いている1つのイベントとなっている。
「聞いたことある。テレビでも話題になってたみたいだけど、昔のことだから忘れちゃったな。それより_」
どうしてそんな昔のことを。
すると、璃来は耳を疑うような発言をした。
「ぼくたちだよ、その生還者。金星の塔は、ぼくたちが一度死んだ場所」
「…え?…何言って……」
