「お前らの行動力にはホント驚かされるわ」
夏休みも開けて新学期も始まり時は9月。体育祭当日を迎えた日の朝、澤田君が靴紐を結びながらしみじみと言った。
あの後、晴れて停学から解放された澤田君は以前と変わらない日々を取り戻した。
残りの夏休みの期間も何だかんだと皆で集まったし、休みが終わった後も毎日のように生徒会執行部のメンバーとして活躍している。
時々、襲撃されたりすることはあるけど、ツンキーが大人しくなったおかげでかなり平和。
問題の澤田君のご両親も山奥に転校させるより、真面目な友達が沢山居る環境の方がいいと考えているらしく、安泰を手に入れた校長の喜びようが凄い。
「これだけは絶対に外せなかったんですよ」
「相手はヤツだろ。勝っても煩い、負けても煩い」
「大丈夫ですって。後始末は香織ちゃんに頼んでありますから」
微妙そうな顔をする澤田君の背中を勇気づけるように叩き、穏やかに笑う。
今から澤田君が走るのは障害物競走だ。ライバルはお馴染みツンキー。ここはどうしても外せなかったので生徒会の権限で捻じ込んだ。真っ直ぐに勝敗をつけて欲しかったから。
ツンキーは意外と乗り気で今もスタートラインから澤田君を見て闘志を燃やしている。
腕のヒビも綺麗に治ってお馴染みの静電気ヘアーも復活しているが、いつもはおかしく見える髪型も今日だけは少しマシだ。
ハチマキと絶妙にマッチしていて、見方を変えれば少年漫画の主人公に見えなくもない。