「やぁ、香織ちゃん。待ったかい?」
日が進み、来たる補習の最終日。学校の門の前。広報の慶彦が香織ちゃんに優しく声を掛ける。
「いえ。今、来たところです」
声を掛けられた香織ちゃんはパッと元気良く顔を上げると頬を染めて笑顔を振りまいた。
うん。可愛い。今日の香織ちゃんは全方位、敵なし状態。薄く化粧をして髪をハーフアップに結び、態度も声もお淑やか。
真っ白なワンピースがよく似合うし、この間見たときよりも純情度が二割増し。
私たちの後ろを歩いていたツンキーが「え、え、香織ちゃん…⁉」と、動揺を隠しきれない声で呟いたところからしてメチャクチャ可愛い。見惚れてしまうのも無理はない。
ここまで香織ちゃんを可憐な女の子に仕上げたのは鈴花《すずか》と小春《こはる》と私だ。
少ない女子力をフルに動かしまくって頑張った。ここから私たちは慶彦と香織ちゃんを主役にして、理央の指示の元、ツンキーを成敗するための罠を仕掛ける。
ちなみに撮影者は雄大と颯だ。2人とも姿が見えないように配慮しつつ、ビデオカメラを構えて待機している。