「障害物競走、原谷。こっちも原谷。これも原谷」
ピーコ閉じ込め事件から1週間後の生徒会室。メンバー全員が長机を囲って体育祭の種目について議論する中、未だツンキーに対して苛立っていた私は障害物競走の走者の欄に永遠とツンキーの名前を連ねていた。
あれからツンキーは停学になり実質的には成敗された。しかし、謝ってもくれず反省もなく、こちらはモヤモヤを募らせてる。
顔を合わせないし、怒れないし、処分は甘いし、怒りをぶつける先がここくらいしかない。ファッキュー、ツンキー。許さんぞ。
「なんで、あいつの名前ばっか書いてんだよ」
それを隣で見ていた澤田君が苦笑いを浮かべる。すっかり生徒会のメンバーの一員って顔をして、絶対に入りたくないと拒否していた最初の澤田君が嘘のようだ。
「一人で障害物競走を走らせるためですよ」
「一人じゃ競技にならないだろ」
「ならなくていいです。途中で彼が食べるパン全部に下剤を仕込むことが出来ますから」
『的中率100%!』と言って悪魔のような笑みで“タン”と舌を鳴らし、首を切るように親指をシュッと横切らせる。ツンキー成敗のポーズだ。勿論、冗談ではあるが。
「待て。それだけはヤメておけ」
しかし、澤田君は真剣な顔で私を止めてきた。ペンを握った私の手を掴んで、首を横に振って、諭すような瞳で本気も本気。冗談で言っただけなのに顔がガチ。しかも他の皆まで真に受けている。