「ピィィィィコォォォッ!!」
夕暮れ時の校庭。古ぼけた飼育小屋の前。私の大絶叫が辺り一面に響く。
放課後、机の中に放り込まれてあった『飼育小屋に来い』と書かれた手紙に気づき、指示された通りノコノコとこの場所へ来て今。
昔ながらの飼育小屋の中。金網の奥でピーコが震えながら縮こまっている。扉には南京錠。鍵を保管している職員室まで往復15分。待っていられるか!と思わずガシャンッと音を立てて金網に大突進。叩いたり蹴とばしたり、ぶち破ろうと必死になる。
「菜々ちゃんっ⁉どうしたのっ⁉」
私の叫び声に気付いた小春が生徒会室の窓から凄まじい形相で顔を覗かせた。その横から出てきた理央も焦りを滲ませた顔で何事かと身を乗り出す。
「ピーコが……!ピーコがぁ……!」
「ピーコがどうしたのっ?」
「ピーコが殺られるぅぅ!」
「ええっ⁉」
「早く出してぇ!早くぅぅっ!」
堪らず再び大絶叫。心配してくれた小春に事情を説明しょうと叫ぶが、涙も相俟って上手く話せない。息も絶え絶えに「鍵が欲しい」と伝えるので精一杯。
だって大ピンチ。ピーコの傍らには殺人鬼と呼ばれている大悪党のニワトリがウロウロしている。
こやつ気が荒ぶるとボロボロに突っついてくるわ、蹴るわ、叫ぶわ、暴れるわ、で物凄く強暴。一緒に育った仲間達は怪我だらけになって別の場所に貰われていった。それほど強暴な暴れ鳥。
更にその奥には我が校のギャングと言われているうさぎ達。ふわふわで愛らしい顔をしているが、可愛いと思って触ろうものなら、その丈夫な歯で肉を食い千切る勢いで噛んでくる。
あの強暴なニワトリと対等に渡り合える時点でお察し。要は両方、飼育員泣かせの鬼だ。恐ろしく頭も回るし。
上に飛んで逃げようにも掴まるものが何もない。疲れて羽を休めたら最後。大人しいピーコに勝ち目はない。