ミニジェットコースターに乗った後、まだ時間があったため三人でコーヒーカップに乗ることにした。
テンションが上がっていた栄斗が勢いよくハンドルを回しすぎたせいで、コーヒーカップから降りても頭がふらふらで足元がおぼつかない。
「ままー、いそがないとしょーにちこくしちゃう!」
「うう。分かってる。ちょっと待って」
先を急ごうとする栄斗になんとか返事をするけれど、目が回っている。
走り出した彼を追いかけようとしたそのとき、くらりとめまいが起きた。
前に転びかけると、力強く腰を引き寄せられ、柑橘系の香りがふわりと鼻をかすめた。
「……っ!」
「ひかり、大丈夫か?」
気遣わしげに私の顔を覗き込む瀬七さんに、どきりと心臓が跳ね上がる。
瀬七さんの顔をこんな近くでみたのは、あの休憩室ぶりだ。
腰にまわされた手の力強さに、頬がじんわりと熱を帯びる。
「無理はするな。栄斗君は俺に任せてゆっくり歩いてきてくれ」
「は、はい。ありがとうございます……!」
彼は安堵したように笑うと、私の乱れた髪を長い指で整えて先を行く栄斗を追いかけてくれた。
速くなった心臓の音は、心地よい音色で体に響いているのがわかる。
今、また瀬七さんへの気持ちが大きくなってしまったような気がする。
これ以上、好きになりたくないと思うのに……。


