瀬七さんの言葉にうなずいて反応すると、彼は歩き出す。

 しかし部屋を出ていく直前に、ぴたりと動きを止めた。

 「あと」

 「え……?」

 「東園寺と話すくらいなら、俺に連絡しろ。あいつよりも、君を大切にすると言い切れる」

 瀬七さんの言葉に、心臓が波打つ。

 た、大切って? 

 瀬七さんは意味深な言葉に、心臓の音がバクバクと激しく体に響く。 

 「私、東園寺先生のことは、本当に何も思ってません。さっきは、星宮ちゃんが冗談で言っただけで」

 私に背中を向けている彼に、必死に弁解する。

 このまま瀬七さんに、私があの人に好意を持たれていると勘違いされたままではいやだ。

 すると彼は振り返って、からかうような笑みを浮かべた。

 「そうか。ひかりは俺だけを見ていればいいよ」

 冗談なのか、本当に言っているのか。

 瀬七さんの言葉を真に受けてしまい、とっさに反応できない。

 そんな私に微笑みかけると、彼はオペ室に戻っていく。

 瀬七さんは、何を考えているの? 何が真実なの?

 残像に残った不敵な笑みに心をかき乱されて、私はしばらく動けなかった。