瀬七さんの思ってもみない申し出に、どきっと心臓が跳ねる。
「スマホ、出してくれるか?」
彼は手のひらを私に向けて、要求してきた。
「ど、どういうことですか? なんでスマホ?」
瀬七さんはため息ひとつついて、差し出せとさらに促してくる。
「俺の連絡先、どうせ消したんだろう? 何かあったときに、手伝いにいくから登録しておいてくれ」
「そんなっ……瀬七さんには、関係ないでしょ。ただでさえ忙しいのに、うちのあれこれに巻き込めないですって」
「ひかりを放っておけない」
瀬七さんの瞳に熱を感じて、動きを止めてしまう。
どうしてこんなに、昔から親切にしてくれるのだろう。
そんなの、恵さんに申し訳が立たない。
「だめです! 瀬七さんにはお付き合いされている人がいるじゃないですか。め、恵さん……と!」
もうここまできたら、この話題に触れないというわけにはいかない。
勢い任せに告げると、瀬七さんは怪訝な顔で首を傾げた。
「ひかりは何を言ってる? 俺は誰とも付き合っていないし、恵……? 誰のことだ?」


