更衣室で一緒になった星宮ちゃんは、隣でスマホを見ながらシフトをチェックしている。

 今日は九時から手術が三件入っていて、オペナースもそれぞれに割り振られるのだ。

 「星宮ちゃんは、どこの手術なの?」

 術着に着終え終わり、髪をきっちりお団子にして尋ねる。

 「心外です。西堂先生が執刀医なのでテンション上がってますよ」

 「え……」

 瀬七さんの名前が突然出てきて、どきりと心臓が跳ねる。

 あの手術から数日経つが、瀬七さんに会っていなかった。

 今日は大丈夫だろうと、たかをくくっていたけれど、隣で手術だとしたら十分顔を合わせる可能性がある。

 人も多いし、バタバタしているし、見かけても遭遇は回避したいな。

 速くなった鼓動を落ち着かせるために、大きく深呼吸をする。

 「ひかり先輩、緊張してるんですか? 大川先生怖いですもんね」

 私の行動を違う意味で受け取った星宮ちゃんが茶化すように笑った。

 「そうなの。いまだに私も怒られるんだから」

 瀬七さんとは、いずれ器械だしで仕事をすることがあるだろう。

 しらを切り通そうと決めたが、観察眼が鋭い瀬七さんに通用するのかと、今更とても不安だ。

 「瀬七さんと仲良くなりたいけど、みーんな大好きだから、もうアイドルみたいな感じだもんなぁ。それに院長の娘さんもいるし……諦めるしかないですよね」