メグ、という名前が聞こえ、はっきりと目を覚ます。
朝、ジェニーさんと瀬七さんの会話に出てきた、あの“メグ”という人だろうか。
瀬七さんの声は遠い場所から聞こえてきた。
薄めを開けてあたりを確認すると、寝室のすぐ向かい側のバスルームにバスローブを羽織った彼の背中が見えた。
「とにかく、こんな夜中に女性がうろつくのは危険だ。今から来るのは勘弁してくれ、俺もゆっくりしたい日もあるんだ」
瀬七さんにしては珍しく、焦っているような口ぶりだ。話の内容から電話の主は女性で、家に来たいと言っているのだろう。
いったいメグさんと瀬七さんはどんな関係なの?
心臓が早鐘を打ち、呼吸が浅くなる。
「ああ……、はぁ。ジェニーが言っていた女性とは一緒にいないよ。分かってる。信じてくれ」
私の存在を消した瀬七さんの言葉に、耳を疑った。
あんなに好きだと言ってくれたのに。
やっぱり、私のことは遊びだったのだろうか。
「その話は、また次会ったときな。結婚式に関しては君とちゃんとプランを固めていきたいと思っているから。うん……じゃ、切るぞ」
結婚式? ということは、瀬七さんはメグさんと結婚するの?
高まっていた気持ちが波を引くように去り、虚しさと哀しみが押し寄せる。
すると瀬七さんは話すのをやめ、メグさんの言葉に聞き入っているようだった。
私の位置から、スマホから漏れている女性の声がはっきりとは聞こえない。
「メグ……分かってる。愛してるよ」


