ベッドの隣にいた瀬名さんは、まだ息が整っていない私をきつく抱きしめる。
髪に指が差し込んだかと思うと優しく梳かれ、それさえも体が反応してしまう。
「住んでみたいとは思ったことがなかったです。英語もしゃべれないし、ハードルが高すぎて」
素直に伝えると、瀬七さんは喉奥でかすかに笑い、私の耳に唇を押し当てる。
「君なら英会話なんて負けん気でどうにかなるだろう。俺が何かふっかければ」
「なっ。ひどい……! でも……なんでそんなことを?」
不思議に思って彼の顔を覗き込むと、瀬七さんは微笑んでついばむようなキスを落とす。
「君と離れたくないから、一緒に住む未来がきたらいいなと思って。俺はアメリカとシンガポールに患者が山ほどいて……なかなか日本に帰れないから」
「なるほど」
まだ交際を始めたばかりで、そこまで考えていなかった。
でも、瀬七さんが一緒にいたいと思っていてくれ、遠い未来まで考えてくれたのが嬉しかった。
「瀬七さんといっしょにいられるなら、私、頑張りますね」
「なんだそれ。可愛すぎるぞ」
「ふふっ」
瀬七さん、大好きです。出会ったばかりだけど。
ずっと、私のそばにいてほしい。
降り注ぐキスが心地よくて、意識がぼんやりとしてくる。
明日の昼の便に搭乗する予定だから、朝寝坊しないようにしないと……。
そんなことを思っていたらいつの間にか眠っていた。
遠くから男性の話声が聞こえ、徐々に意識を取り戻す。
「メグ、そんな話聞いていないぞ」


