また彼を思い出しそうになるけれど、ぶんぶんと頭を振る。

 「今日もオペなんだから、気合入れないと……!」

 素早く着替えを済ませ、前髪をヘッドバンドで上げ、ようやく私は母と息子が待つリビングの扉を開けた。

 「みんなー、おはよう。あれあれ、なんだか甘い香りがする」

 オープンキッチンになってるので、食器洗いをしてくれている母と真正面から目が合う。

 「今日はお疲れのひかりにスペシャルメニュー。ささ、食べちゃって」

 母の視線の先にあるダイニングテーブルには、はちみつがたっぷりかかったフレンチトーストが置かれている。

 「もう、お母さん本当に最高。今日のオペ頑張れそう! ありがとう!」

 「それはよかった。おかわりもあるからね」

 席について手を合わせると、キャキャッと笑い声が聞こえてきた。

 すでに栄斗は朝食を食べ終わったようで、テレビから流れる教育番組の曲に合わせダンスをしている。

 小さな体で一生懸命体を動かす姿を眺めていると、思わず口元が緩んでしまう。

 はぁ……本当に栄斗は可愛いわ。