瀬七さんの言葉に動きを止めた。あまりに、自分と結びつかない内容すぎて。
驚く私を見て、我に返った瀬七さんはふっと表情を緩める。
「驚かせてごめんな。でも、君には伝えておきたかった。感謝しているんだ、心から」
「どういうことですか?」
黙って私を見つめる彼に、目で真意を問う。これに関しては、いつもみたいにふざけて聞き流してはいけない気がした。
「今回日本に戻った理由は、大学病院時代に世話になった恩師の葬式に出るためだった」
「え……?」
瀬七さんの言葉に緊張が走る。
思ってもみない事実だった。ただ恩師の方に用があって、会いに行っただけだと思ったのに。
じゃあ、私と一緒にいる間彼は、元気に振舞ってくれていたということなのだろうか。
「病で苦しんでいるとは知らず、俺は呑気にシンガポールで働いていた。俺がこの手で彼の命を救いたかったよ」
瀬七さんは笑っているが、私を見つめる瞳に悔しさがにじんでいた。
この旅で彼のつらさは微塵も感じなかった。
むしろ、元気に見えていた。きっと心理的疲労は彼の方が遥かに上回っていたはずなのに。
「上司が心配して、無理やり休暇をくれた。それでも気持ちが休まるなんて到底思えなかったし、むしろ辞めてしまいたいと……」


