天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~

 「……っ」

 彼のまっすぐな言葉が心に響いて、胸が熱くなった。

 瀬七さんに愛される女性はいいなぁ、と羨ましく思う。

 自分とまったく関係がないのが、少し悲しい。

 その後は料理を食べながら、セントーサ島にあるテーマパークでアトラクションを楽しんで帰ろう、と話し合って決めた。

 店を出た私たちは、人で賑わうビーチを隣り合って歩く。

 「ねー、瀬七さん。足だけでも入りません? せっかく海に来たんだし」

 あまりにも観光客が気持ちよさそうに海水浴を楽しんでいるので、思い切って提案してみる。

 しかし彼はめんどくさそうにため息をついて、腰に手を当てた。

 「そんなことしてたら日が暮れるぞ? 早く移動したい」

 「そう言わずに、思い出づくりに付き合ってくださいよ」

 瀬七さんの訴えを聞かずに靴下とスニーカーを脱いだ私は、ジーンズの裾を折って海に向かって走り出す。

 やっぱりリゾート地にきて海に入らないなんて、なんだかもったいない。

 「きゃーっ、冷たい……!」

 足首まで水に浸かると、ぶるりと身震いしてしまう。

 いくら気温が三十五度くらいあっても、水の中は随分冷えているのだ。

 すると呆れた顔の瀬七さんが、サンダルのままじゃぶじゃぶと水の中に入ってきた。

 「だから言っただろ……ってうわっ!!」

 目の前にいる彼に向けて、手ですくった水をかける。しっかり顔に命中し、彼の髪が海水でびっしょり濡れた。

 「私を無理やりバンジーに連れて行った仕返しです!」

 「っつ……ひかり……」