天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~


 瀬七さんの意外な質問に、ガーリックバターで焼いたロブスターをごくりと飲み込む。

 看護師になろうと思ったきっかけなんて、誰にも話したことがない。それに、聞かれた記憶もない。

 「……うちの父は私が中学生のときにガンで亡くなっているんです。闘病中は学校が終わってからお見舞いに行ったりしてて。そこで看護師さんに父が励まされたりお世話してもらっているのを見て、かっこいいなぁって。たぶん、それがきっかけでしょうか」

 「随分他人ごとだ」

 呆れたように笑う瀬七さんに、恥ずかしくなる。

 ずっと強くそう思っていたかというと、そうじゃないから仕方ない。

 「高校二年生のときに進路を決めるってなったときに、ようやくはっきり心が決まった感じでした。父みたいな病気の人のそばで助ける仕事に就きたいって。あとは……やっぱり早く独り立ちして、ずっとひとりで働きづめだった母を、経済的に支えたかったっていうのは大きかったかな」

 「なるほど。お母さまのために」

 「はい」

 残り少なくなったパイナップルジュースをストローで一気に吸い込む。

 それにしても。普段から仲良くしている友人たちよりも、出会ったばかりの瀬七さんに深い話をしてしまっているような。