急に触れられて、びくっと肩が跳ねてしまう。
恐る恐る顔を上げると、すでにウエイターがドリンクを持ってきてくれていた。
瀬七さんは私にそれを伝えるつもりで、頭を撫でたみたいだ。
間の悪さと、大げさな反応をしてしまってとても恥ずかしい。
それに素直に彼に伝えすぎたかも、と頬が熱くなる。
テーブルに乗った、ノンアルコールのパイナップルカクテルを持つと、チンッと音を立て、瀬七さんのグラスが重なった。
彼は一口を吞みかけて、再びグラスをテーブルに置く。
「君はすぐに顔に出て見ていて飽きないな。別に変なことを言ってるわけではないんだから、照れるな」
「瀬七さんには、やっぱり全部見抜かれてるんですね」
瀬七さんが超能力者だったわけではなく、私が分かりやすすぎるだけだったのか、と納得する。
瀬七さんはまた私を見て笑っている。
そんなに面白い、私? バンジーが終わった後だからか、前向きに捉えてしまう。
それから私たちは食事をしながら、仕事のことを中心にいろんな話をした。
瀬七さんのご家庭は代々医療従事者で、父親が外科医だったので、当たり前にその道を作られてきたこと。
日本一の超難関大学の医学部を卒業後、大学病院で研修医となり、ガヴィン・ケイシー・ホスピタルの外科医として赴任した話。
私も何年も看護師として働いているので、研修医、そして医者が日々体を酷使して働いているのは知っている。
それに彼は加えて、言語が違う異国の地で難しい手術を行っているのだから、その大変さは想像に及ばない。
かっこよくて、頭もよくて、それに努力できる人。
瀬七さんは私と住む世界が全く違う、特別な人なんだと思わずにはいられなかった。
「君の話も聞きたい。どうして看護師になろうと?」


