瀬七さんと連絡先を交換し、この日は解散した。
翌朝。彼が親切に私の泊っているホテルまで迎えに来てくれ、ラウンジで二度目の対面を果たす。
瀬七さんに事前に言われていた動きやすい格好で現れると、彼も彼で白いシャツにジーンズ、サンダル姿だった。
一般男性の適当のような服装も、瀬七さんが着ると特別な衣装のように見える。
彼は私の服装を上から下へとチェックすると、満足そうに笑った。
「言いつけをしっかり守ってくれてたようだ。今日は少しハードだから、覚悟しておいて」
「え、それどういう意味ですか?」
てっきり近場の有名な観光地を紹介してもらえると思ってたのに、違うの?
と言いたいところだけれど、この旅は瀬七さんに任せると決めたのだから、と言い聞かす。
ホテルを出て、かの有名なマーライオン像を素通りし、街のモノレールに乗車。
数駅過ぎたあたりで、車窓からの眺めが都会的な街並みから真っ青な海に変わっていった。
瀬七さんは本土からすぐそばにある、“セントーサ島”に私を連れて行ってくれるようだ。
ここはアスレチックパークや、博物館、ウォータースライダーや水族館などがある巨大観光地となっていて、私もガイドブックでチェックしていた。
ようやく旅が始まった気がして、気持ちが高まる。
「ビーチで遊ぶなら、先に言っておいてくださいよ。水着もあったのに」
下車した後、観光客で賑わうシロソビーチの砂浜を歩いていると、彼は突然ぴたりと足を止めて何故か空を見上げた。
「いきなり水着もってこいなんていったら、君は警戒するだろう? それに、今日の目的はビーチじゃない」
「え?」


