「大変じゃないですか? 研修を受けながら一時帰国なんて」
「いや、しっかり休暇はもらっているんだ。だから時間には余裕があって……」
そんな話をしていたら、注文していたスープや棒棒鶏などの前菜が運ばれてきた。
いい香りが鼻腔をくすぐり、ごくりと大きく喉を鳴らしてしまう。
知らず知らずに私の体力は底をついていたようだ。
あれだけさっきの一件で神経を使ったし、汗もたくさんかいたのだから当たり前だ。
「……さっき、救命措置のときにひかりさんがいてくれて心強かった。俺だけだったら、間に合っていなかったかもしれない」
ふいに聞こえてきた瀬七さんの声に、意気揚々とお皿に食事をとり分けていた手が止まる。
彼はとても真剣な顔でこちらを見ていた。
感謝の言葉は嬉しいが、むず痒い。褒められるようなことをしたという自覚がないからだ。
「わ、私は当たり前のことをしただけです。目の前で苦しんでいる人がいたら、医療従事者として助けに行きますよ」


