「しょ、食事、ですか……?」
まさか食事に誘われるとは夢にも思わず、声が上擦ってしまう。
しかも見ず知らずの人と一対一で。相手は男性で。イケメンで。
「もしかして、現地で約束があるとか?」
「えーと……それは……」
ない。三泊四日、まるっきりひとりきりの旅行である。
事前にガイドブックで回りたい場所は決めていたけれど、英語もまともに読めず、ホテルさえ辿り着けるのか不安だ。
英語が話せるこの人に色々相談に乗ってもらえそうだと、少々期待はしてしまう。
しかし若干男性不振に陥っている今、素直に誘いには乗れない。
彼は医者で人命救助までした姿も見ているので、信用していないわけではないが……。
悩んでいると瀬七さんが爽やかに笑いかけてきて、スマートに手荷物を奪った。
「ないってことだな。じゃ、行こうか」
「あっ、ちょちょっと!」
警戒心を持ちつつも、これも一期一会だと思って彼の誘いに乗ることにした。


