天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~

 病人の体調が安定したため緊急着陸はせず、到着予定時刻の十六時五十五分に、無事にシンガポール・チャンギ空港に到着した。

 瀬七さんといっしょに現地の救急隊に航空機内で倒れた男性の状況を説明し、引継ぎを行う。

 急病で倒れた男性は現地で入院することが決まり、航空機から担架で男性が救急車で運ばれていく姿を見届けて、ようやく肩の力が抜けた。

 「お疲れ様」

 「お疲れ様です、本当に」

 搭乗口に向かう通路で、一緒に戦った瀬七さんと顔を見合わせる。
 
 シンガポールに到着するまでの間、瀬七さんは頻繁に患者の席に出向き、様子を伺っていた。

 彼の医師として患者に真摯に向き合う姿に温かい気持ちになったし、私も微力ながら尊い命を救う手伝いができたと、少しだけ誇らしい気持ちにもなれた。

 優雅なフライトとはいかなかったけれど、これから看護師として働いていく中でこの経験が生きるときがあるだろう。

 するとふいに整った顔が微笑み、どきりと心臓が驚いた。

 すぐそばにあるガラス窓から陽光の光が差し、キラキラと瀬七さんの美しい姿を照らしている。