瀬七さんは即座に男性を触診し、男性の気道を確保して心臓マッサージを始める。
「まずいな。君、AEDの準備を」
「はい!」
エコノミー症候群なのか、持病の悪化なのか……空の上で、かつ医療器具がほとんどない状況では何も判断できない。
今はとにかく救命措置だけを考え、治療は地上についてからだ。
CAさんに機内に設置されているAEDをもってきてもらい、私が準備を進める間。
瀬七さんは額から汗を流し、必死で心臓マッサージを行ってくれている。
一分一秒を争う危険な状況だ。
準備が整い、AEDで心臓に電気ショックを何度か与えると、男性の指がかすかに動き始めた。
奇跡が起き、心臓が再び動いてくれたようだ。
よかった……! 助かった。
大きな安堵のため息を落し、無意識に男性に寄り添う瀬七さんを見る。
すると彼も同時に私の方を向き、自然と互いに笑いあった。
意識を戻してくれた男性に、瀬七さんは即座に点滴を打ち、その後の様子を見ることになる。
本当に、私ひとりだったらどうなっていたか分からない。あのお兄さんがいたから助かった。


