聞き慣れた声が耳に届た瞬間、手に感じていた温もりがぱっと離れていく。
「せなおにいさんっ……」
顔を上げると、白衣を着た瀬七さんが数メートル先でしゃがみ、走っていく栄斗の目線で微笑んでいた。
「栄斗くん、久しぶりだな」
瀬七さんを前にして泣くのは、大人として恥ずかしい。
急いで涙をハンカチでぬぐっていると、視線の先に見える栄斗は瀬七さんに勢いよく抱きついた。
「せなおにいさん! ままを、まもってあげてください!」
え……?
「ぼくだけじゃまもれないっ。ままがないてる」
目を瞬いている間も、栄斗は必死で瀬七さんに想いをぶつける。
そんな彼の健気な姿に、止まっていた涙が再びこみ上げた。
「栄斗くん」
「栄斗……」
抱き着かれている瀬七さんも驚いた様子だ。
この四年間。苦しいときも、楽しいときも。一番近くで私を見てくれていたのは、紛れもなく我が子の栄斗だ。
瀬七さんに告げず一人で産み、この手で彼を立派に育てようと決めた。
でも現実は私が栄斗に励まされることが多く、栄斗の存在があったから様々な困難を乗り越えてこれたし、ここまで仕事を頑張れた。
私はそんな栄斗に、一番幸せな選択をしていきたい。
ふたりが血の繋がった親子だと、ちゃんと伝えたい。
「栄斗くん、教えてくれてありがとう。俺にとって栄斗くんも、栄斗くんのママも大切な存在だよ」


