最後に栄斗が母の傍に行きたいと切望したので、手を繋いでICUの前までやってきた。
もちろん、栄斗は母に会うことはできない。
電気が落とされた廊下は薄暗くあたりは静まり返っており、心まで冷えていくようだ。
母が倒れてからいろんなことを考えた。
体の弱い母に、無理はさせていなかったか。
母がこうなる前に、私は何かできなかっただろうか……。
母は一か月くらい間から、たびたび背中が痛いと言っていたのを思い出した。
あれは、心筋梗塞の前兆で間違いないと思う。病院での検査を強く薦めていればこんなことにはなっていない。
看護師の私がそばにいながら最悪な状況になってしまい、心から申し訳なく思う。
「まま、だいじょうぶ?」
「ごめん、大丈夫だから」
必死で目元をぬぐう。
今まで女手ひとつで育ててくれた母に親孝行できていないまま、失いたくない。
手を繋いでいた栄斗が私の顔を覗き込んで心配している。
こんな小さな子供に心配させたくない。早く泣き止まなければ……。
「ひかり、栄斗くん」


