「……わかった。今すぐ戻るね」
緊迫した彼女の声から、患者の容態はかなり深刻なのだろう。
電話を切って、恵さんに小さく頭を下げる。
「お話の途中ですみません。オペが入ったので、戻らないと」
「こちらこそ、長い時間ありがとうございました。もし、困ったことがあったらいつでも相談してください。私にできることはなんでもします」
「ありがとうございます」
彼女と軽い挨拶をし、その場から離れる。
瀬七さんへのはやる気持ちを抑え、オペに意識を集中させる。
術着に着替え、オペ室へ大急ぎで向かう。
すでに器械出しの準備をしてくれている星宮ちゃんに断りを入れ、パソコンで患者の容態など詳細を確認していく。
【氏名:オクナカズコ 年齢:59歳 胸部に激しい痛み。急性心筋梗塞の疑いで〇〇区〇〇の路上で倒れ、現在意識不明の重体】
「え?」
画面に母の名前が書いてあり、絶句する。
「うそ……え?」
もう一度内容を確認するけれど、画面に表示されているのは母の情報で間違いない。
倒れた場所も、自宅から近い歩道だ。
ショックが大きくて、私まで倒れそうだ。
今朝普段通り元気いっぱいの母を見ていたので、信じられない。
「奥名さん、大丈夫? どうかしたの」
背後から看護師長の気にかけてくれている声が聞こえ、我に返る。
「し、師長。今から運ばれてくる患者さん、私の母です」


