やっぱり、と声にならない言葉がこみ上げた。
東園寺先生は平然とした顔をしていたけれど、私が靡かなかったから相当恨んでいるのだ。
でもだからといって、申し訳ないなんて思わない。人の気持ちをコントロールするなんて、できない。自己都合で嘘をつき人を陥れようなんて、人間性を疑ってしまう。
「東園寺先生の誤算は、私と瀬七が婚約していると思い込んでいたことです。だから嘘が上手くいくと思ったようですが……真実が明るみになった今、父は相当怒っていますし、私、これから彼がどうなってしまうのだろうと、少し怖いです」
「な、なるほど」
恵さんの言葉に、一週間前院長に忠告されたときのことを思い出す。
普段は温和そうな院長の、氷のように冷めた表情。いったい、何をされてしまうのだろうと、本当に恐ろしくなったものだ。
すると恵さんはホットティーを一口飲み、ティーカップをお皿に置く。
「ここまで言ったんですけど、私……瀬七のことが本気で好きだったんですよ。物心ついたときから、大人になるまでずっと」
その言葉を聞いて、どきっと心臓が大きく跳ねる。
じゃあやっぱり、四年前にふたりが付き合っていたのだろうか。
次々と疑問が頭に浮かんでいると、恵さんはまっすぐ私を見た。
「でも。瀬七がシンガポールに滞在しているときに、しっかり振られてしまいました」


