笹本医師をその場に残し、足早にその場から立ち去る。
ひかりが俺を困らせたことなんて、一度もない。
彼女は、誰よりも人の気持ちを最優先に考える女性だ。
ただの噂でも、ひかりを傷つけるものは俺が許さない。
誰なんだ? 彼女を悪者に仕立てたやつは……。
扉を開けた瞬間、前からやってきた医師と肩がぶつかる。
顔を上げると、目の前に東園寺が立っていた。
「おはようございます。西堂先生」
「……何時だと思ってる?」
遅れてきたというのにへらへら笑うこの男に、ついに怒りをぶつけた。
患者の現状を把握するカンファレンスに参加せず、手術にだけは挑む。
肝心の手術も監視の目がないと雑さが目立ち、いつか医療ミスを起こすのではないかと不安で仕方ない。
こんな男に、人の命を扱う資格なんてない。
黙って俺の顔を見つめる男から視線を外し、歩みを進める。
「……今日の手術が終わったら、一から出直せ。今までのずさんな行動はすべて上に報告済みだ」


