「え……? それはいつからですか?」
「んー、だいぶ前からですよ。西堂先生がこの病院に来た直後とかかな。ふたりが仲良く話していたとか、一緒にマタニティグッズを見ていたのを目撃したとか……ほんと色んな話を聞きますよ。もしかして院長もそんな話を小耳に挟んだのかな」
笹本医師の話の内容に、頭が痛くなった。
俺は恵との間にそんな噂が立っているとは、まったく知らなかった。
確かに俺は人目も気にせず、何度か恵と院内で会話をした。
一緒にマタニティグッズを見に行ったといえば紗彩のベビーシャワーのプレゼントを選んでいたときだ。
この病院の誰かに見られていたのか?
「あ、この顔思い当たる節があるって感じですね」
笹本医師の喜んだ顔を見て、思わず大きなため息を吐く。
「たしかに、今話されていた内容になんの間違いもないですが、俺たちはそれぞれ想っている人がいるし、恋愛関係というのは絶対にないんですよ」
「そうなんですか!?」
俺が普段医局室にほとんど滞在せず個室にこもる時間が長いから、今更聞く羽目になっているのか。
笹本医師は、ナースや医師の間でこの噂が広まっていると言った。
以前ひかりが、俺に何度も恵との関係を確認してきたのを不思議に思っていたが、この噂話を彼女の耳にも入っていたら?
当たり前に俺との関係を躊躇するだろう。
もしかして、俺が避けられているのはこの噂話と関係しているのだろうか……?
確信に触れそうになったそのとき、笹本医師に笑顔で肩を叩かれた。
「で、僕が一番気になっているのは、西堂先生に猛アタックしているシングルマザーの話ですよ」


