翌朝、あまり眠れなかった俺はいつもより早い時間から出勤していた。
予定時刻に会議室で行われる合同カンファレンスに出席し、これから行われる心臓弁膜症手術へ意識を集中させる。
難易度の高い手術になると予想され、今回はベテランの笹本医師を呼び、東園寺医師に助手についてもらう予定だ。
東園寺医師は、遅刻なのか姿が見えない。俺がこの病院に赴任して何度目だろう。
彼のあまりの意識の低さに、怒りが限界まできている。
カンファレンスが終わり席を立つと、すぐに笹本医師に声をかけられた。
「西堂先生、霧島院長のお嬢さんとご結婚されるんですか?」
まったく身に覚えのない内容に、眉をひそめてしまう。
「……いえ。その予定はありませんが、なぜそのようなことを?」
「ええ、そうなんですか? 霧島院長から直接聞いたんだけどな。娘さんと西堂先生が結婚を視野に交際しているって」
「霧島院長に?」
確かに院長には恵との結婚を熱望されているが、俺はそのつもりはないと口酸っぱく言ってきた。
院長はしつこいが嘘をついて外堀を固め、俺に恵との結婚を強いる狡いタイプではない。
いったいどうして、俺たちがそんな話になっているのか分からない。
不可解な事態に渋い顔をしていると、笹本医師は遠慮がちに俺を見る。
「その顔、全然知らないって感じですね。西堂先生と恵さんのご関係、ナースや医師の間でも噂になっていますよ」


