恵とその男性は、院長には内緒で長年愛を育んでいるらしい。
彼女は院長になんとか許しを得て、その男性と結婚したいと教えてくれた。
俺は兄のような立場で、恵たちの行く末を遠くから見守っていこうと思う。
「じゃあ、俺はそろそろ失礼する。メグによろしく伝えておいてくれ」
「わかったわ」
紗彩に挨拶を済ませ、病院を出る。
ビルとビルの間から差し込む西日の強さに目がくらみ、自然とその場で足が止まった。
強い影が落ちる。
三十四年間、ここまでの孤独を感じたことがなかったように思う。
あのときと何も変わらないひかりと再会できて、彼女とそっくりの息子――栄斗くんに出会って。
血が繋がっていないというのに、栄斗くんを我が子のように愛おしく感じてしまった。
ひかりも、そして栄斗君もこの手で幸せにしたいと、強く願ってしまった。
ひとりきりで生きてこれた、以前の俺には戻れない。


