その夜、私は瀬七さんに遊園地に連れて行ってくれたお礼の言葉と一緒に【込み入ったがあるので、こんど時間を作ってほしい】と伝えた。
瀬七さんはさっそく、自分の平日の休みと私が仕事が終わった日の夜に時間を合わせて夕食でも一緒にどうか、と提案してくれる。
私は快諾し、数日後に彼へ本当のことを話す機会を得たのだった。
緊張はするが、瀬七さんの人柄なら私の話にちゃんと耳を傾けてくれるという自信があった。
私は嘘偽りなく、彼に事実を話すと覚悟が決まっていた。
そしてその日は、あっという間に訪れた。
私は普段通り手術室で器械出しの準備を行う。
今日は東園寺先生が執刀医の心臓血管外科の手術で、私が担当だ。
最近毎日東園寺先生からくるメッセージを返さないで、意思表示をしていた。
だから顔を合わせるのが少し気まずい。
「奥名さん、よろしくね」
手術室にやってきた東園寺先生が笑顔で挨拶してきたので、無理やり口角を上げた。
「東園寺先生。今日はよろしくお願いします」
ここ最近、瀬七先生と東園寺先生が一緒で手術に入ることが多く、彼だけのパターンは珍しい。
「奥名さん、連絡を無視するなんてひどくないですか? もしかして別に好きな人ができた?」
案の定、準備が整って彼の横に付いてすぐ、私にだけ聞こえる声で問い詰めてきた。
手術前で意識を集中したいときにする話ではないので、内心呆れ果てる。
「連絡のことはすみません。でも、前からお伝えしている通り、東園寺先生と、そういう気は本当にないので……」


