「瀬七さん……」
彼の口からそんな言葉が出てくるとは思っておらず、激しく動揺してしまう。
忘れられなかった、って。いったいどういう意味なんだろう。
緊張で喉が渇き、ネックレスを持つ手が震えてきたので、とっさに拳を握った。
そんな私を、振り返った瀬七さんは熱い眼差しを送ってくる。
「ずっと、ひかりに会いたかった。俺は君のことが……」
「うわぁーーん!!」
突然聞こえてきた栄斗の泣き声に、私たちは後部座席を振り返る。
栄斗は目をつぶったまま大泣きしており、怖い夢でも見たのかもしれない。
大急いで私たちは栄斗のもとに駆け寄り、彼をチャイルドシートから降した。
「大丈夫か、栄斗君」
「はい、時々こういうことがあるんです。でも抱っこしてしばらくしたら落ち着くと思いますので」
「そうか」
泣いている栄斗を抱きかかえ、泣き止むまであやすことにする。
先程まで流れていた甘い雰囲気はすっかり消えて、慌ただしい空気に様変わりしてしまった。
ちらりと横目で瀬七さんを見ると、すでに普段通りの冷静な横顔に戻っていた。
残念なような、ほっとしたような。いや、残念だ、やっぱり……。
五分後、栄斗は泣き止んでまた深い眠りにつく。その隙を見て、私たちは車を走らせると決めた。
「ひかり、困ったらいつでも声をかけてくれ。サービスエリアに車を止めるから」


