渡しそびれていたもの? って、なんだろう。
まったく見当がつかず、不思議に思いながら巾着袋の口を開く。
「っ、これ……」
「ああ、旅行中にひかりが見ていたネックレスだよ」
手のひらに乗った太陽のチャームはあの日と一寸も変わらず、陽光に照らされて光輝いていた。
瀬七さんは私が消えてからもなお、こうして手元に取っておいてくれたのだ。
「ありがとうございます。てっきり……捨てているものだと」
瀬七さんの厚意はもちろん嬉しいけれど、長い年月保管させてしまったことに、申し訳なさも感じてしまう。
ネックレスを太陽にかざしながら、あの日に想いを馳せた。
「瀬七さん……これを見て、私のようだって言いましたね」
『いつもはにこにこ笑っているのに、ふとしたときに悲しい表情をするところが』、と瀬七さんは言った。
見透かされて悲しいような、悔しい気持ちになった。
でも同時に、瀬七さんだけが本当の私に気づいてくれているようで、さらに強く惹かれた。
「よく覚えてるな。今もそう思っているよ」
瀬七さんの言葉に思わず動きを止め、横を振り向く。
運転席にいる彼はまっすぐ前を見据えて、遠くの景色を見ているようだった。
「ひかりを忘れられなかった。だからこのネックレスを捨てられずにいた」


