【短編集】異世界恋愛 (by降矢)

「何が不満なわけ? ……父さんと母さんの子供って感じがしていーじゃん」

 エルはむくれたように。それでいて照れ臭そうに呟いた。

「……そうだな」

 ユーリの頬が緩む。満更でもなさそうだ。

「ぐっ……え~っ、あ~あ~……っと、そうだ! キャルに用があるんだった。俺、ちょっと行ってくるね」

 十中八九照れ隠しだろう。エルはいそいそと忙しなく駆け出す。

「転ぶなよ」

「はぁ? ガキ扱いすんなって――うぉわっ!?」

 エルは盛大につんのめった。因みに言うと、そこには転倒を誘発させるようなものは何もない。

「しまんねーな」

「~~っ、うっさい!!!!」

 エルは顔を真っ赤にして走り出した。微笑むエレノアの横を全速力で通り過ぎていく。

『ふふふっ、エルったら』

「そういうとこ、なんだけどな」

 ユーリは重々しく溜息をついた。エレノアはそんな彼の周囲をくるりと舞う。

「エラ、ごめんな。まだまだ時間がかかりそうだ」

『大丈夫よ。まだまだずっとずっと傍にいてあげて』

 エレノアはそっとユーリを抱き締めた。

 二人はこんなふうにして一方通行なやり取りを重ねていた。

 彼是(かれこれ)20年。寂しくないと言えば嘘になるが、不思議と心は満たされていた。それはきっと同じ未来を夢見ているとの実感があったから。

 『追想の勇者』ユーリ・カーライルと、彼を見守るエレノア・カーライルの物語は今日も賑やかに、時にほろ苦さを帯びながら続いていく。