【短編集】異世界恋愛 (by降矢)

 光は――出さなかった。触れかけた手から力を抜く。

「よろしいのですか?」

「ええ。一秒でも長く貴方と……」

 ユーリの口角が上がる。その鼻先からは呆れたような笑みが零れ落ちた。

「信じてもらえない、わよね」

「喜んでるんですよ」

 短い一言に集約されていた。一秒でも長く共にありたかった。そんな切なる願いが。

「……ごめんなさい」

「約束、お忘れですか?」

 エレノアは首を左右に振る。

「生まれ、変わっても共に……」

「ええ。そうです」

 ユーリの栗色の瞳が涙で濡れていく。だが、決して零さない。笑顔を保ち続けてくれている。

「待っていてください。どんなに遠く離れたところにいたとしても、俺が必ず見つけ出しますから」

 エレノアは頷いた。視界が白くぼやけていく。ユーリの顔ももう見えない。

「愛しています」

「ええ。俺も愛していますよ」

 視界が真っ白に。ユーリの声も、周囲の人々の声も、全身で感じていたユーリの体温も感じなくなった。