【短編集】異世界恋愛 (by降矢)

 いた。ユーリがこちらに向かって駆けてくる。白い軍服の腕や脚の部分は所々血で赤く染まっていた。

「ああ。そう……クリストフ様が呼んでくださったのね」

「エラっ! エラ!!」

 回復術士の女性がエレノアを差し出した。ユーリは彼女に代わってエレノアを腕に抱く。

「魔王、は……?」

「倒しました。後は残党を残すのみです」

「大魔王……?」

「分かりません。ただ、あの魔王……アイザックよりも格下な印象を受けました。おそらくは大魔王ではないのでしょう」

「……そう」

「勇者様! 面目ねえ!!」

「聖女様は僕達を助けるために……っ」

 ユーリは静かに首を左右に振った。戦士達は言葉を呑んで顔を俯かせる。

「夫として貴方を誇りに思います」

 エレノアの口角が力なく持ち上がる。

(傷、が……)

 彼の頬には傷が付いていた。幅1センチ以下、長さ5センチ程の切り傷であるようだ。

 エレノアの手がその傷に向かって伸びていく。