ユーリはすぐさま仲間と共に魔界との繋がりが目される『古代樹』の森へ。エレノアは居ても立っても居られず侍女とエルと共に教会へ。神に皆の無事を祈った。
「職を辞したというのに熱心なことだな」
「っ! クリストフ様」
聞き馴染みのある声。振り返ってみれば、そこに立っていたのは案の定エレノアの元婚約者のクリストフだった。
勇者である彼が何故こんなところに。浮かんだ疑問は瞬時に消える。彼はまだ休職中なのだろう。
「瘴気が発生したそうだ」
瘴気。それは魔物のみが扱える闇属性の魔法だ。この瘴気を扱えるのは純然たる闇属性の魔物のみ。
意外なことに魔物は闇属性+他属性といった具合に複合型の魔物が多く、瘴気を扱える魔物はこれまで数える程度にしか確認されてこなかった。
「ああ。被害は甚大だ。現地の回復術士達が懸命に命を繋いでくれているようだが、正直なところ焼け石に水であるそうだ」
「それほどまでに強力な瘴気であるのですね」
「ああ。君達の『祈り』が必要だ」
現場は聖女/聖者の到着を待ち侘びているという。だが、それには大きな問題がある。
「現存する聖者/聖女は全部で四名。一人は私の妻シャロン、その御父上である教皇、君の兄セオドア、そして君の父上である枢機卿だ」
「……王都の守護を担うお兄様は候補から外さざるを得ないでしょうね。お兄様がいくら強く訴えたところで、きっと聞き入れられない。王都から出ることは叶わないでしょう」
「教皇は言わずもがな。君の父上では力不足だ。そうなると消去法でシャロンということになるが、彼女は現教皇の娘だ。父上は決してお認めにならないだろう」
つまりは、現役聖者/聖女の中に戦地に向かえる者はいないということになる。そう。現役の聖者/聖女に限って言えば。
「さぁ、どちらを選ぶ?」
クリストフは侍女に抱かれたエルとエレノアを交互に見た。
「職を辞したというのに熱心なことだな」
「っ! クリストフ様」
聞き馴染みのある声。振り返ってみれば、そこに立っていたのは案の定エレノアの元婚約者のクリストフだった。
勇者である彼が何故こんなところに。浮かんだ疑問は瞬時に消える。彼はまだ休職中なのだろう。
「瘴気が発生したそうだ」
瘴気。それは魔物のみが扱える闇属性の魔法だ。この瘴気を扱えるのは純然たる闇属性の魔物のみ。
意外なことに魔物は闇属性+他属性といった具合に複合型の魔物が多く、瘴気を扱える魔物はこれまで数える程度にしか確認されてこなかった。
「ああ。被害は甚大だ。現地の回復術士達が懸命に命を繋いでくれているようだが、正直なところ焼け石に水であるそうだ」
「それほどまでに強力な瘴気であるのですね」
「ああ。君達の『祈り』が必要だ」
現場は聖女/聖者の到着を待ち侘びているという。だが、それには大きな問題がある。
「現存する聖者/聖女は全部で四名。一人は私の妻シャロン、その御父上である教皇、君の兄セオドア、そして君の父上である枢機卿だ」
「……王都の守護を担うお兄様は候補から外さざるを得ないでしょうね。お兄様がいくら強く訴えたところで、きっと聞き入れられない。王都から出ることは叶わないでしょう」
「教皇は言わずもがな。君の父上では力不足だ。そうなると消去法でシャロンということになるが、彼女は現教皇の娘だ。父上は決してお認めにならないだろう」
つまりは、現役聖者/聖女の中に戦地に向かえる者はいないということになる。そう。現役の聖者/聖女に限って言えば。
「さぁ、どちらを選ぶ?」
クリストフは侍女に抱かれたエルとエレノアを交互に見た。

