エレノアに投げかけるにしてはやや声が大きいように思う。貴族達の目がユーリに向く。ほんの僅かにクリストフの背が強張ったような気がした。
「だから俺、知ってるんです。クリストフ様が本当は優しくて、面倒見が良くて……繊細な人だってこと」
貴族達がどよめき出す。クリストフが透かさず凄まじい剣幕でユーリを睨みつけたが、ユーリはまるで気にしない。本心ですよ。そう言わんばかりに晴れやかな笑顔で返した。嘘偽りなく慕っているのだろう。
「繊細……そうね。仰る通りだわ」
かつてのエレノアもそうだった。力だけでなく、その精神もまた絶対的なものであると信じて疑わなかった。
クリストフは罰が悪くなったのか、シャロンを半ば引きずるようにして会場を後にした。人々はぎこちなくも談笑を再開させていく。
「……クリストフ様は今休職中なんです」
「……そう」
「でも、俺は必ず戻ってきてくれるって信じてます。……いや、無理矢理にでも連れ戻すって言った方がいいですね」
ユーリは深く息をついて、美しく磨き上げられた床に目を向ける。
「この国に残っている勇者は、クリストフ様と俺の二人だけなんですから」
「クリストフ様のお力もまた必要不可欠ということね」
「言うまでもなく。……言うまでもなく! ですからね!」
ユーリは言い放った。その場にいる全員に向かって。貴族達は気まずそうに肩を縮めて会釈する。
「すみません。はしたなかったですね」
「いいえ。妻として誇らしく思います」
ユーリは照れ臭そうに鼻の下を擦った。少年期の頃の彼を彷彿とさせるような仕草だ。エレノアの心は一層和んでいく。
「……っ」
瞬間、体が重たくなった。
「だから俺、知ってるんです。クリストフ様が本当は優しくて、面倒見が良くて……繊細な人だってこと」
貴族達がどよめき出す。クリストフが透かさず凄まじい剣幕でユーリを睨みつけたが、ユーリはまるで気にしない。本心ですよ。そう言わんばかりに晴れやかな笑顔で返した。嘘偽りなく慕っているのだろう。
「繊細……そうね。仰る通りだわ」
かつてのエレノアもそうだった。力だけでなく、その精神もまた絶対的なものであると信じて疑わなかった。
クリストフは罰が悪くなったのか、シャロンを半ば引きずるようにして会場を後にした。人々はぎこちなくも談笑を再開させていく。
「……クリストフ様は今休職中なんです」
「……そう」
「でも、俺は必ず戻ってきてくれるって信じてます。……いや、無理矢理にでも連れ戻すって言った方がいいですね」
ユーリは深く息をついて、美しく磨き上げられた床に目を向ける。
「この国に残っている勇者は、クリストフ様と俺の二人だけなんですから」
「クリストフ様のお力もまた必要不可欠ということね」
「言うまでもなく。……言うまでもなく! ですからね!」
ユーリは言い放った。その場にいる全員に向かって。貴族達は気まずそうに肩を縮めて会釈する。
「すみません。はしたなかったですね」
「いいえ。妻として誇らしく思います」
ユーリは照れ臭そうに鼻の下を擦った。少年期の頃の彼を彷彿とさせるような仕草だ。エレノアの心は一層和んでいく。
「……っ」
瞬間、体が重たくなった。

