【短編集】異世界恋愛 (by降矢)

「君を選ばずにおいて良かった」

 身を寄せるシャロンの肩を一層強く抱き寄せる。シャロンはクリストフを肯定するように彼の広い胸に頬を擦り付けた。

(シャロン様は変わらずクリストフ様を慕っているのね)

 その事実にほっと胸を撫で下ろす。少なくとも彼は一人ではない。シャロンと共に深い森の中を彷徨(さまよ)っているのだ。苦境であることに変わりはないが、それならばまだ希望はある。

「参りましょう。クリストフ様」

「ああ。向こうで飲み直そう」

 シャロンに促されるまま去って行く。その背を見送る他貴族達の目は冷たい。10年前の彼を思えば考えられない姿だ。

「落ちぶれたな」

「ああ。何と哀れな」

 貴族達の嘲笑がエレノアの鼓膜を揺する。10年前、彼らはエレノアを性的放縦な聖女と嘲っていた。

(……哀れなのは貴方方の方よ)

 彼らもまたその立場上大小様々な不安を抱えているのだろう。故に他を貶めることでその心を慰めているのだ。理解は出来る。致し方のないこととも思うが、やはりどうにも肯定することは出来ない。

「俺、光魔法はクリストフ様に習ったんですよ」

 ユーリは唐突に語り出した。