「中川さん。ヨシニヤってこんなに美味しいんですね。びっくりしました。めっちゃくちゃ美味しいー!」

夏鈴があまりに美味しそうに食べるので、陸斗も笑顔になった。ヨシニヤの牛丼をこんなに美味しそうに食べる人を陸斗は知らない。

陸斗が付き合ってきた女性はヨシニヤでデートなんてありえない。 ホテルのディナーに連れてってと言われるのが普通だ。陸斗に寄ってくる女性はプライドが高い人が多い。かといって自分から本気になれる女性もおらず、告白されたから付き合うというのを繰り返してきた。

ヨシニヤでこんなに喜んでくれるなら、色んな所に夏鈴を連れて行って、食べさせてやりたいと思った。

夏鈴がお味噌汁を食べると眼鏡が曇った。曇ったのをいいことに、陸斗は夏鈴の眼鏡を外した。
陸斗は夏鈴が度なし眼鏡をしていることに気づいていた。

えっと驚いた顔を夏鈴がした。

「度なしなんだろ。牛丼食べる時くらい外してたって問題ない。なにかあれば俺が助ける。」

陸斗はそう言うと夏鈴の眼鏡を机に置いた。