冷静になってから、夏鈴は陸斗に頭を下げた。
「仕事中なのに取り乱しました。今からはもっと頑張ります。本当にすみませんでした。」

夏鈴の謝る姿があまりに痛々しい。

「山下さん。全く気にしなくていいから。あの客が悪いんだ。今だってお客さん来てないし、無理する必要は全くない。俺は暇な時間は休みつつ、仕事すればいいと思ってる。だから、今は休もう。なっ。」

「私、レジに立ってるんで、中川さん休憩してください。ご迷惑おかけしたので、頑張ります」

夏鈴は失態を取り返そうと必死だ。



「夏鈴ちゃん!!!

夏鈴ちゃんは充分頑張ってる。だから、今は休も。休んで、また忙しくなったら、働こう。店長だっていつも休める時休もうって言ってるだろ。」

そう言って陸斗はコンビニに売ってる飲み物を買い渡した。

「夏鈴ちゃんさ、毎日食べてる?コンビニの残り物以外で。」

「はい。食べてます。」

「じゃあ昨日は何食べた?」

そう聞くと夏鈴は黙り込み、慌てるようにお寿司と答えた。

「お寿司か。上手いよな。」
絶対嘘だと思ったが、そこは突っ込まなかった。

「夏鈴ちゃんは一人暮らし?」

「いえ、実家暮らしです。」
陸斗は驚いた。こんなにバイトしてるのは、仕送りが少ないからだと勝手に思っていた。

「あっそうなんだー。兄弟とか多いの?何人暮らし?」

「いえ、一人っ子で、3人暮らしです。」
陸斗はお金が無いのは兄弟が多いのかと想像したがそれも違うようだった。