「でも響子ちゃん、恋敵以前に友達じゃん、私達は」



するりと喉から出てきた言葉をそのまま口に出す。

響子ちゃんは私の言葉を聞くと、バッと顔を私に向け綺麗な瞳を揺らした。



「自分勝手で八方美人な所は私も自分であると思ってるけどさ、"クズ"とか"大嫌い"とかって友達に向ける言葉じゃないよ」


「……」


「私が一回でも響子ちゃんにそんな言葉吐いた?響子ちゃんは、確かに吐かれるような事はしてきてないけど、私はこれから先も響子ちゃんに絶対そんなこと言わないよ。だって友達じゃん、辛い時に友達に悲しいこと言われんのはもっと辛いんだから」



「…………ごめん、なさい……」


「響子ちゃんいつも言ってたじゃん、隠し事しないでって……辛いならなんで私に言わなかったんだよ、恋敵だから?そんなの関係ないよ、言えば良かったんだ、友達なんだから」



はらり、と響子の美しい瞳から雫が落ちた。



響子ちゃんは自分でどこが良くなかったってきっと分かってる。
分かってるけど、きっと私に言って欲しかったんだ。


私も、色々なことから逃げちゃダメなんだ。




「私は響子ちゃんに怒ってなんかないし、言ってることは間違ってないと思う。でも、私は悲しかったよ…」



私は、悲しかったという気持ちに蓋をして響子ちゃんと付き合っていける訳がなかったんだ。

だから目の前で泣いている響子ちゃんがいるのに、なぜか気分が晴れやかになっていた。