※こちらはマンガシナリオです

〇学校・屋上(昼休み)

再びキス寸前なほど近づく二人。
柩はいのりの首元に黒いナイフを突き立てている。
ナイフがいのりの首筋を滑り、赤い血がわずかに垂れている。
(ひつぎ)「私の計画に従うか、ここで死ぬか」

バカにするように、目を細めて笑う柩。
柩「どうしました? 怖くて声もでませんか?」

不敵な笑みを浮かべるいのり。その表情は陰になって読み取りづらい。
いのり「そんなわけ、ないでしょう」
いのり「だって私は」
いのりはブローチを握りしめる。

☆ ☆ ☆

いのり「伝説の魔法少女の娘なの!」

柩は驚いた顔をして、固まっている。

いのり「今ここに、天の思し召したる(しゅく)を!」
いのりがそう叫ぶと、いのりの周りに白いバラの花びらがふわりと舞う。

いのりのシルエットが映る。

☆ ☆ ☆

変身したいのりが登場。全身が映る。
黒い髪は銀髪になり、床に付くほど長く伸びてよりふわふわに。
頭にはチェーンのヘッドドレス。
中華風で長さのある赤いイヤリングが追加。
瞳が紫から赤に。
眉がやや吊り気味に。
服はブレザーから、白っぽいロングチャイナドレスのようなものになり、靴もヒールブーツに。
胸には母から受け継いだ紫水晶のリボンブローチ。
背中には白い翼が生えている。
両手には、太陰太極図を模した飾りがついた大ぶりのステッキ。

スティックをかざすと、突きつけられていたナイフがふわりと消える。

不敵な笑みを浮かべた柩。

柩「へぇ」

☆ ☆ ☆


柩「随分と様になっていますね」
柩「……だが」

いのり「っ!?」

目を見開くいのり。
柩の周りにたくさんの黒いバラの花が舞う。まるでナイフのように鋭い。

柩「魔王の息子である私を、舐めないでいただきたい」

☆ ☆ ☆

柩が腕を振り下ろす。
いのりは慌ててステッキを回してその攻撃を防ぐ。

柩「付いてきますか。いいでしょう。肩慣らしにちょうどいい」

不敵な笑みを浮かべ、柩は大量のナイフを浮かべる。

☆ ☆ ☆

いのりと柩の攻撃の応酬。
空中で距離を取りながら戦う。
柩は余裕な顔、いのりは汗をかいている。

柩「私も貴女も世界平和を望んでいます」
いのり「……分かってる、でもっ」
柩「ではこうしましょう」

柩が腕を大きく上げた。黒いいばらのようなものが飛び出す。

☆ ☆ ☆

いのり「きゃっ!?」

いのりはいばらに囚われ、空中で固定される。
そこに近づいた柩は、いのりの顎を指でなぞる。

☆ ☆ ☆

とびっきりの蕩けるような笑顔の柩と、驚いた顔のいのり。

柩「貴女を惚れさせます」 ※大きめのコマ

いのりは顔を真っ赤にさせる。

いのり「はぁ!?」
柩「一か月で、貴女の心を変えて見せましょう」

☆ ☆ ☆

柩「貴女が私と共にいる、最善のシナリオを選ぶように、ね」

柩が指を鳴らすと、いばらが一瞬でほどける。
いのりは顔を真っ赤にしながら、柩を睨みつける。

いのり「……受けて立ちましょう」

☆ ☆ ☆

いのりと柩は着地する。
いのりは、柩にぴしりと人差し指をさす。

いのり(正直どうなるかわからない。でも――)

いのり「一か月。一か月でいいんですよね」
柩「え?」

☆ ☆ ☆

いのり「私が惚れなかったら、金輪際関わらないって約束してください!」

いのりの高らかな宣言に、柩は不敵な笑みを再度浮かべる。

柩「えぇ。約束しましょう」

ほっとしたいのりは、魔力切れを起こして崩れ落ちそうになる。

☆ ☆ ☆

変身が解けて意識を失ったいのりを支えたのは、同じく変身を解いた柩だった。

柩「無理をさせましたね」
柩「……保健室にでも運びましょうか」

柩はいのりの高校の制服に変身すると、お姫様抱っこでいのりを運ぼうとする。

そこで何かに気付き、目を見開く。

☆ ☆ ☆

勢いよく変身して翼を広げ、いのりを抱えたまま上空へ飛ぶ柩。

柩「消えろ」

柩は、下に沸いた魔王の手下(小さな黒い生き物)を怖い顔で見下ろす。
その視線だけで手下たちはしゅわ……と消えていく。

☆ ☆ ☆

柩「もうこんなところまで来ているのか……」
柩「早く結ばれなければ……」

柩は複雑な表情で、目を閉じたままのいのりの髪を整える。

☆ ☆ ☆

〇学校・廊下(昼休み)

モブ生徒1「誰、あのイケメン」
モブ生徒2「あんな人いたっけ!?」

きゃあきゃあと黄色い声を聞きながら、柩はいのりを保健室へと運ぶ。
柩の顔は険しいまま。
留守中と書いてある保健室の扉をパワーでこじ開け、ベッドに横たわらせる。

☆ ☆ ☆

〇学校・保健室(昼休み)

柩「いのりさん。私は貴女を守りたい」
柩「……裏切者などに渡してたまるものか」

わずかに開いた保健室の扉の向こうに、柩たちを見ている人影がいる。