試験結果が自宅に送られてきて、リシェルは無事に合格することができた。リシェルの友人達も合格でとりあえず安堵した。配属先はバラバラだと思うが同じ王宮府に仲間がいるのは心強い。アントンも合格できたが、騎士団は近衛に配属されない限り王宮にはいられない。新人が近衛に抜擢される事はまずないので、卒業したらしばらく会えないだろう。

 友人達がほっとしたところで、卒業パーティーのお相手問題が持ち上がった。学園に妹や従姉妹がいれば頼む事もできるが、リシェルにはどちらもいない。悩みどころである。年が明けてから考えればいいだろう、と思っていたら、もう1月も終わりである。あと1か月ちょっとしかなくなり、さすがにリシェルも焦りだした。
「別にパートナーなんかいなくてもいいんだろう?」
リシェルはヤケクソ気味にアントンにたずねてみた。
「まあね。ただ、卒業パーティーも授業の一環だし、パートナーがいないとなると『社交性がない』と判断されるらしいから。」
「そ、そうなんだ。」
アントンの優しい返答を期待していたリシェルは、逆に切羽詰まることになり、顔面蒼白である。するとアントンがある提案を持ちかけてきた。
「俺の妹ならどうだ?」
「セイラ嬢か?でも、アントンの相手がいなくなるだろう?」
「それが、ひとつ下の女生徒に変わった子がいてさ。」
とうとうアントンの良さに気づいた令嬢が見つかったのか?
と思いきや。
「来年、騎士団の試験を受けたいから、それについて色々教えて欲しい、って言われたんだ。」
「令嬢なのに?」
「辺境伯のお嬢さんだそうだ。」
「兄弟はいたよね?」
「変わってるよな。」
辺境伯を継ぐ兄弟がいるのに騎士になりたいという令嬢を想像してみるが、剣術が苦手なリシェルには到底理解できそうになかった。