チリンチリンと涼しげな音がひとつ 口のなかで冷たくジャリッと解けていくものがふたつ。不気味なリズムとともに、黒いメガネをかけた男性が出てくるあの物語…      これぞ夏の三大欲求!〜人間のネガティブは、実に恐ろしいもので〜全身、黒尽くめの男がテレビの中から語りかけてくるがベランダで夏の三大欲求の中にいる私は、幸せすぎて耳から音声だけが頭に通り、意味なんてちっとも入って来てはくれなかった。             この幸せな休みももうすぐ終わるのか…私はふと、寂しく思う。と同時に、身体の底から、あいつらへの憎しみが湧いてきた。それは、無色透明の水に、墨汁を垂らしたように広がり、止まることを知らない。休みが終わればまた、学校であいつらと顔を合わせなければならない。想像しただけで反吐がでる。幸せの中にいた私が、気づけばどん底へと引きずられていた。私が何故そこまで、あいつらのことが嫌いなのかは、私にもわからない。けれどそれは、あいつらも同じだ。理由を聞かれたら答えることは、できないだろう。私達は、互いに物凄く嫌いあっているくせに、ずっと一緒にいる。まるで最初から決まっているかのように…                   憎い…憎い、          パリンッ            何かが割れた音が私のネガティブを掻き消した。バタバタと慌てた足音が聴こえてくる…お母さんだ。   「あら、割れちゃったのね。大丈夫        
?怪我は無い?]         
お母さんは、眉毛をハの字に曲げて心配そうに聞いてくる。地面には、大きく4つに割れた風鈴が私を映していた。              [無いよ。大丈夫]         私は、そう言ってお母さんに微笑んだ。お母さんは、ほっとしたような顔をして、一言呟く。      [おかしいわねぇ…風が吹いてないのに落ちるなんて]         確かに風は、吹いてなかったはずだ
きっと金具が弱ってたんだろうな。私は、深くは考えず下に落ちている風鈴の欠片を拾った。