オディールが死んだ日に


そう言えば、翆はパリに出発する際タクシーを拾うと言っていた。以前、空港に一週間車を停めっぱなしにしていたら結構な金額がいったから後悔した、と言っていた。それ以来空港に行く際はタクシーか、俺の送迎に頼っていた。


俺は迷わずマンションの地下駐車場に降りて行った。結のことも心配だったが、妻の方がまだ俺の中で存在は大きい。


俺のSUVタイプの外車と同じメーカーの、しかし翆の車は俺の車より少し小ぶりで色も赤色。そのキーを解除して俺は運転席に回った。


ダッシュボードやらコンソールボックスからはボックスティッシュや化粧直しの口紅、予備のハンカチぐらいしか出てこなかった。その置き場所は几帳面な翆の性格を窺える。何も違和感は覚えない。トランクや後部座席も調べてみたがこれと言った何かを見つけられることはできなかった。


もう一度運転席に座り込み、ミラーの角度を眺めているとふとドライブレコーダーの光が青く点滅していたことに気づいた。


ふと思い立って、俺はドライブレコーダーのSDカードが仕舞われている場所に触れた。


翆が不倫していたと、仮定するならば、もしかしてその相手の男をこの車に乗せた可能性はある。


いやいや、翆は不倫なんてしてない。


その二つの感情がごちゃまぜになっていたが、俺はSDカードを引き抜いた。不倫相手ではなくとも、誰か車に乗せた形跡があったのなら、その人物が今回の翆の死に何か関わって、或いは原因を作ったかもしれない。


俺はそれを掌にきゅっと握り、翆の車を後にした。


一つ手掛かりを手に入れた気になった。