頭が痛い。割れるようだ。
昨日、飲み過ぎたからか?酷い二日酔いだ。いいや、それだけじゃない、結の思わぬ襲撃にあって参ってるんだ…
『今日だけはあたしをお母さんの代わりと思って、いいよ』
結は何であんなことを。
俺がもしキス以上のことを求めたら、結はそれに応えたと言うのか。結は男を知らない風だったのに、何故こんな見知らぬ中年男に許そうと思ったのか。単にからかってるだけなのか。そうだとしたらタチが悪すぎる。
やはりあんな訳の分からない娘を早々に追い出した方がいいな。結のおかげで目ざめの時に翆のことを考える余裕はなかったが。それだけが救いだ。
俺は頭を押さえながら寝室を出た。喉がからからに干上がっている。水でも飲んで少し考えをまとめよう。何とかしてあの娘、結を一刻でも早く追い出さなければ。けれど昨日怒鳴って寝室から追い出したから、もうこのマンションを飛び出ていった可能性もある。うん、そうだ。あれぐらいのガキ、追い出すのは簡単だ。
そう思って階段を下ったが、キッチンの方から普段は嗅ぎ慣れない料理の香りが香ってきて俺の鼻はムズムズとくすぐられた。
ダイニングテーブルの上に何かを並べていた結の姿を見つけてぎくりとした。結は俺が知らない高校の制服だろうか、半そでの白いブラウスに青と黒、白のタータンチェックのリボン、そしてそれと同じ柄の短いプリーツスカート姿の上、持参してきたのだろうかネイビーのエプロンを着ていた。
スクランブルエッグとウィンナーが乗った皿を並べていた結は俺に気づいて
「おじさん……おはよ…」と控えめに挨拶をしてきた。昨日の今日でキマヅイし顔を見たらまた怒りが沸いてきそうだったが何とか「おはよう」と俺も挨拶した。ここで昨夜のことを蒸し返して怒鳴り返すのは流石に大人気ない。しかし昨日、半ば強引に部屋から追い出したから、てっきりこのマンションを飛び出ていったかと思ったが。
「朝ごはん作ったの…勝手に冷蔵庫のもの使ってごめんなさい」彼女は控えめに言った。昨夜、俺を誘ってきた人物とは到底同一人物だと思えない程、しおらしかった。
別にいいけど、とは言葉には出せなかった。逆に『何でまだいるんだ』と問いただしたかったが、こちらも言葉は出てこなかった。
結は手際良く朝食の準備をして、コーヒーメーカーからホットコーヒーを注ぎ入れ、テーブルの上に置く。そのタイミングを見計らって
「「昨日は――――」」
二人の声が重なった。



