どれぐらい飲み続けただろう。もうボトルの半分程減った。


ロックグラスに入れた氷が溶けて、アイスペールに入れた氷の山から一つ二つと氷をグラスの中に入れていると、遠くで足音がした。確認するまでもなく二階のゲストルームから螺旋階段を伝って結が降りてきたのだ。


結は薄いグレーのスウェット上下だった。良かった、ここで変に色気のある寝間着を着てこられたらまたも写真を撮られて脅されるところだった。しかしシンプルなスウェットはイマドキの女子高生が愛用しているものだと思えば納得だが、結が着ているそれは彼女の素の美しさをより引き立たせているように思えた。


そしてその姿はやはり翆のそれに酷似していた。


俺が結を泊めた理由―――本当は脅されて、なんかじゃなく俺は翆の面影をいつまでも追い続けたかったから、なのだろうか。


結は右の脇に割と大き目の犬のぬいぐるみを持っていた。


散々俺をハメることをして実に狡猾だと思ったが、意外とまだ子供っぽいところがあるものだ、と思うと不思議と今までのやり取りがイヤではなくなった。


「どうした?眠れないのか?」俺が聞くと


「おじさんも?」と結は目元を擦りながらキッチンへ向かった。


水でも飲むのだろうかと思っていたが


「ねぇー、このケトル使っていい?」と電気ケトルを持ち指さし。


「別にいいが、何をするつもりだ?」


「お腹すいたからこれ食べようと思って」


全然気づかなかったが、結の手にはカップラーメンがあった。しかも結構な大きさだ。


「この時間にカップラーメン?」


時間は夜中の1時をさしている。


「うん、だってお腹すいたもん」


「翆は日頃から体系維持に気を付けていて、絶対に食わなかったけどな」


「あたしは若いから代謝がいいんですぅー」ベーと舌を出してしかめっ面を浮かべる結に何故だか笑ってしまった。


翆とは顔がそっくりなのに、中身は正反対で、でもどこか


憎めない。