ホントはもう少し音夢でいたかった。

もう少し夢を見ていたかった。

でも、もうこれで終わりなんだ―

覚悟を決めて顔を上げた時。

ステージ袖にいる皇月先輩と美雲さんと雪村さんの姿が見えた。

みんな、「頑張れ」というように笑顔でわたしを見てくれている。

そして雨沢先輩がわたしにだけ聞こえるくらいの小さな声で「大丈夫だよ」とつぶやいた。

そして、「いい?」と瞳で尋ねられた気がして、無言で頷く。

大丈夫。魔法は解けてしまうけれど、わたしにはこうして見守ってくれる人達がいる。

「それでは音夢ちゃん、クラスと名前をお願いします」

雨沢先輩の言葉に、わたしは一度深呼吸をしてからマイク越しに答えた。

「――1年A組、月島 美夢です」