静まり返った教室に、ペンを走らせる音が響く。

窓の外では夏を告げる蝉の大合唱が聞こえ
る。

最後の一問を見直し、私はシャープペンシルを机に置いた。

勉強したかいあって、手応えは充分。

「はい、そこまで!」

先生の言葉と同時にチャイムが鳴り、解答用紙を後ろの席から回しながらみんなが一斉に話し始めて、教室が一気に騒がしくなった。

お茶会でもう一度夢の様な素敵な時間を過ごしたあと、私に待ち受けていたのは期末テストという現実。

でも、それも今解放された。

あとは夏休みが来るのを待つだけ。と言っても、わたしの場合は友達もいないし何の予定もない夏休みだけど。

「え~妃花ちゃんすごい! 」
突然聞こえて来た声に視線を向けると、如月さんの席に早速いつもの取り巻きの子たちが集まってはしゃいでいた。

「夏休みに家族でフランス旅行なんて、さすが元モデルのお母さんだよねぇ」

わざとみんなに聞こえるように大きな声で話しているのか、離れたわたしの席にまで聞こえて来た言葉。