いつかあの空が咲く夜に

今日もいつもこ土手に腰掛ける。
昼頃に雨が降っていたせいかいつもの芝生が少し濡れているような気がする。
水たまりに映った空はとても綺麗できらきらと輝いている。
そして昼に降った雨が嘘みたいな青空に目を向ける。
やっぱり空はいつもきれいだ。
「今日も来てるんだ。」
振り返るといたのは
「俐斗くん」
俐斗くんは私と同い年。
人気モデルで頭もよくて優しくてとても尊敬している。
「菜沙はいつもここにいるね。今日は雨上がりなせいかより一層綺麗に見える。」
優しく微笑みながら私の横に腰掛ける。
「菜沙は今日なにかあった?」
「んーん。なにも。俐斗くんは?」
「今日はね、いつもの土手に来たら菜沙がいて話せた。」
「そっか」
「他人事だね。そういえばさ...」
こうやって俐斗くんはたくさん話してくれる。
だから私がわざわざなにか言わなくても大丈夫。
それから数時間経ち、日も沈みかけ、東の空には月が見えていた。
「そうそろ帰ろうか。送っていくよ。」
「ありがと」
俐斗くんの家は私の家の隣のマンション。
2週間前に引っ越してきたばかりだ。
「俐斗くん。今日仕事は?」
「今日は午前中だけだったんだ。ドラマの撮影でセリフ多くて不安だったんだけど、どうにか終わったよ。」
「そうなんだ、おつかれ。」
「ありがとう。じゃあまたね」
「うん、ばいばい」
俐斗と別れて家に入る。
「ただい...」
「菜沙!!こんな時間までどこにいたの!!」
「ごめんなさい。土手に...」
「土手?!いつも土手で遊んでばっかり。ほんと芹莉とは大違い。」
芹莉は私の姉。勉強もよく出来て、運動神経も抜群。その上生徒会長だなんて悪い所を見つける方が難しい。そんなお姉ちゃんと比べないで欲しい。
「菜沙聞いてるの?!」
「うん。」
「お母さーん、3階まで声響いてるんだけど?菜沙叱るのもいいけど、静かやってよ。」
「あら、芹莉。お勉強の邪魔しちゃった?
ごめんなさいね。ほら!菜沙謝りなさい!」
「お姉ちゃんごめんなさい。」
「...それよりご飯まだ?」
「そうね!もうご飯にしましょう!菜沙、ご飯食べたらすぐ私の部屋に来なさい。」
「うん、わかった」
お母さんの部屋は和室。
そこに正座してガミガミ怒られるのが一連の流れ。
1番端の部屋なのでどれだけ言ってもお姉ちゃんの部屋に声が届くことはない。
また家にいたくない思いが降り積もっていく。